奥田理事長×佐渡 裕氏 対談

奥田理事長×佐渡 裕氏 対談

3.興味と向き合うことは、新しい世界と出会うこと。

佐渡:
昨今、海外で活動していて感じるのは、オーケストラの団員も様々な国から集っているということです。グローバル化が進んでいる。それは国際交流の機会が増える一方で、それぞれの国の個性が少し薄くなっているという部分もあります。オーケストラで言えば、国によって使用している楽器の特徴が違うことが多いのですが、他国からやって来た演奏者の方に、その国で使っている楽器に合わせて、今までとは違う楽器を使ってほしいと言うわけにはいきません。だんだん各国のオーケストラに、違う国の楽器の音が入ってきて、今までとは違うスタイルになってきていることは確かです。
奥田:
その国の個性が薄くなるのは少し寂しい気もしますが、これも一つの、新しい時代に向けての変化なのですね。伝統を残したいと考える人たちと、グローバル化を推進していく人たちと、それぞれの道を模索して、新しいオーケストラの在り方が生まれてきそうです。状況の変化と言えば、昨年からコロナ禍が始まり、大きく社会が変化しましたが、そういった中での音楽活動はどのようなものでしたか?
佐渡:
やはり演奏会が中止になったり、お客様を集めることができなかったりと、様々な障害がありました。こうした不便の中で思い出すのは、東日本大震災のときのことです。あのときは、ものすごい無力感がありました。自衛隊や警察、消防士の方々が被災地に駆けつけて命を救う姿、医師や看護師の方の活躍、それから物資を届けたりするトラック運転手の方も、ニュースで見るたびに「なんて尊い仕事なんだろう」と思ったことを覚えています。そしてそういう状況になったときに、改めて音楽の意義を考えました。人の命を救うことはできないけれども、人の心を動かし、人と人をつなぐことができる、音楽の不思議な力。考えてみれば私たち音楽家のお客様は家族でも友人でもない、名前も知らない人たちですが、演奏を聴いている空間では、一つの気持ちになることができます。もっと言えば、演奏者たちだって違う環境で育ってきた一人ひとりで、先ほどお話しした通り生まれた国も異なっていることは珍しくありません。そのことをもう一度思い返して、音楽は人と人が一つのものをつくり、それを喜び合えるエネルギーを創り出せるものだと、再認識しました。これが私の、音楽に対する一つの答えです。
奥田:
佐渡さんのルーツである、音楽で人がつながる経験には今も新しい発見があるんですね。私も音楽は本当に素晴らしい文化だと思っていて。日本でも街のあちこちで音楽が流れていますが、海外ではホームパーティーで演奏会をする文化もあったりするように、世界各国あらゆる場所で親しまれているものだと思います。共鳴・共感を生んで、さらに人をつないでくれるものだなと。もちろん、音楽に限らず芸術作品などもそういった力がありますよね。
佐渡:
私は、どんなものにも興味を持つきっかけが必要だと思うんです。子どもたちにその機会を持てるようにするのが、私たち大人の役割だなと思っていて。例えば、子どもたちにとって、40分もあるベートーベンの交響曲はとても長く感じられると思います。ですが一方で、この交響曲には長い間多くの人に評価されるだけの素晴らしさがある。そのエピソードや要因を丁寧に紐解いて子どもたちに伝えていくと、どこかに興味を惹かれる部分があるはずだと思うんです。それをきっかけにして知識や技術を深めていくことができれば、必ずその子のためになると思います。
そして同じことが、あらゆる文化や芸術、学習においても言えるでしょうね。
奥田:
その通りですね。きっかけはどんなことでも良くて、でもその興味を持ったきっかけを深めていく姿勢を、子どもたちには育んでもらいたいものです。最初は単純に「好き」という気持から、具体的にどういった部分が好きで興味を持ったのかを分析できれば、より広い視野が広がっていくと思います。好きなアイドルの楽曲から別ジャンルの音楽の世界へ、マンガから美術の世界へ。興味を持つことは、未来への扉のようなものですね。
佐渡さん、今回は対談いただきありがとうございました。
佐渡:
こちらこそ、教育について貴重な対談の機会をいただき、ありがとうございました。

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