奥田理事長×佐渡 裕氏 対談

奥田理事長×佐渡 裕氏 対談

ベルリン・フィルの指揮台に立つなど、指揮者として世界的に活躍されている佐渡 裕氏と奥田理事長が、夢を叶えるまでの軌跡から今後の展望、教育観を語り合いました。

1.夢や目標は、未来へのエネルギー。

奥田:
佐渡さんは世界的な指揮者として、国内外問わず活躍されていますよね。現代はグローバル化が著しく進んでいる時代ですが、とりわけ海外で積極的に活動されている方は、どんな方が多いですか?
佐渡:
一言で表すと「エネルギーにあふれている人たち」ですよ。私自身、海外で活動し始めて32年ほどになりますが、特に私よりも上の年代の方々のパワーには驚くばかりです。目標や目指す場所が明確で、そこへまっすぐに進んでいく力があります。それはどのような分野の方でも同じです。
奥田:
私たちよりも上の年代の方々……。まだまだ海外で活躍する日本人も少なく、まさに時代を切り拓いていった世代の人たちですよね。社会に出たとき、本当に役立つのはそういったチャレンジ精神だと思います。「前進力」と言いますか、一人の人として何を大切にし、成し遂げたいと思うか、それが明確であることが重要だな、と。だからこそ、子どもたちには夢を持ってほしいと考えています。最初はちょっとした興味から、ゆくゆくは「何が好きか」を見つけていけると良い。例えばカッコよく働くキャビンアテンダントさんに会う機会があって、その姿に憧れてキャビンアテンダントを目指したり。きっかけは何でも良いんです、そこから自分らしい「好き」を見つけていけますからね。
佐渡:
まず自分の中で「大切にしたいこと」を見つけるのは大事なことですよね。私は、小学校6年生のときの卒業文集に「ベルリン・フィル※の指揮者になりたい」と書いていました。実は母がオペラ歌手で、ピアノの講師もしているのですが、その影響で4歳にも満たないうちからピアノを弾いていたんです。そのため音楽に触れる機会が多く、学校でも合唱のときに伴奏を担当したりと、音楽の分野でリーダーシップをとる経験が増えていきました。そのとき、音楽は人と人をつないでくれるものだと実感したんです。全く違う環境で育った人でも、音楽を通してつながり、仲良くなれる。それがとても楽しくて、指揮者になろうと決めました。それからずいぶん経って約40年後、紆余曲折ありながらベルリン・フィルの指揮台に立つことができました。そのとき、幼馴染や友人たちから一斉に「夢が叶ったね!」と連絡をもらったんです。自分としては、こんなに多くの人に自分の夢を語っていた記憶は無かったのですが、実はたくさんの人に見守られていたんだと初めて知りました。だから、夢を持ち夢を言葉にすることは、大切なことなのだと思いましたね。
奥田:
小学校6年生の頃から、具体的に考えられていたんですね!それに夢を言葉にし続けたことで、たくさんの人とのつながりを実感できたというのは、何とも素敵なエピソードです。やはり夢への原動力は、その音楽を通して人とつながる楽しさ、それを好きと思う気持ちですか?
佐渡:
それはもちろんですがもう一つ、「自分の中のコンプレックスと向き合う」ことが大事だと思います。実は私は子どもの頃、歌や演奏することを楽しんでいた一方で、音楽は努力をしなければならない難しいものだ、という気持ちがありました。私は母からピアノを教わっていましたが、なかなか厳しい指導で。友達と外に遊びに行きたい日でも、必ず30分~1時間はピアノの練習をしないといけなかった。だから音楽に対して、好きな気持ちと苦手意識が混在していたんです。でもそれが、音楽の道に進むうえで大きな糧になったと思います。「好きなだけでは乗り越えられない」ということを早い段階から知ったこともありますし、目標の実現には苦手と根気強く向き合う必要があるということも学べました。
奥田:
なるほど、コンプレックスがあるからこそ前に進めるというのは、良い発想ですね。今まで佐渡さんが活躍されている舞台を拝見してきて、いつも笑顔を絶やさないエネルギッシュな姿を見てきた身としては、そういった苦手意識があったということは意外です。
佐渡:
実はそういったコンプレックスは、時として大きな力になるのではないかと、世界で活躍される他の方々を見ていても感じますね。だから、家から外に出て社会を知るというのは学校の重要な役割だと思います。子供たちが家族以外の人とコミュニティをつくり、その中で指導者に見守られながらコンプレックスに出会い向き合う。そうすることで見えてくるものもあると思うんです。また、「自分らしく」というのも大切にしています。私の場合、1年のうち半分は海外で過ごしているのですが、海外で日本がとても恋しくなることもありますし、本音を言うと、英語できちんと伝えたいことを伝えられるのか未だに不安になることだってあります。でも私はそれでいいと考えています。これは母の教えでもあるのですが、「どこに行っても自分らしくいるべきだ」と。今まで育った環境の中で得た知識や、育まれた心、そして自分の意志に誇りを持ち、やりたいことと向き合ってこそ、自分らしく活躍できると思うのです。
奥田:
環境に合わせて変わるのではなく、どのような環境であっても自分らしく活躍できる人になる。それこそ人生の道を見つけるために必要な心ですね。限られた条件や環境、コンプレックスを前にしても、試行錯誤して物の考え方・捉え方を変化させながら自分らしく前進していく。そうやって夢や目標を目指していけるよう子どもたちをサポートすることも我々の大切な役割だと思います。
  • ※ベルリン・フィル……ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の略。世界最高峰のオーケストラ団体。

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